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■夜の匂い
私はいつものように、地下にある薄ぐらいクラブで、
ぼんやりと週末を過ごしていた。
日常からかけ離れたその場所では、
男がオスとして女がメスとして、
そのサガを確認しているようにも思えた。
通り掛かり様に背の高い男が
私に向かってつぶやいた。
「お前は夜の匂いがしないな」
・・・夜の匂い
この闇から浮き出ているいうことだろうか。
私はこの退廃とした空気が好きだったが
夜の住民ではなかった。
そして男もまた、
周りのオス達とは異なる種類の男だった。
男は微笑んだ。冷たい香りのする微笑みだった。
その目は獲物を発見したときの獣の目と同じだった。
私も微笑んだ。了承の合図だった。
この男の生贄になってしまいたい。
自虐的な興奮で体の中の冷たい血が、
沸沸と沸き立っていった。
男はそのまま私の手を引っ張って、
その太い腕の中に収めた。心地よかった。
こうやって、よくわからない理由を付けられて
男の好き勝手に抱かれるのが好きだった。
その肌は、滑らかで、暖かで、艶やかだった。
その艶は、見ているだけで興奮したし
その暖かさは、全てを曝け出してもいいと
思わせるような包容力があった。
そして、興奮と安心に包まれて、
あなたの冷たい香りに包まれる。
私は沸き立った血を押さえられず
唇でこの服を剥き、使える感覚をすべて使って、
男の肌を必死に貪った。
私達の肌はしっとりと絡み合った。
あなたの肌の窪みに、
すっぽりと入ってしまうような
自分の体の作りに感謝した。
私は、まるであなたのために作り上げられた
オートクチュールの人形のようだった。
私たちは、このまま抱き合い、重なりながら繋がって、
そして一枚の皮膚になろうとしていた。 |
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■カナリア
人々の愛を受ける為に飼われて
鳴き声と羽の色でそれに応じる。
カナリア ・・・・・・・・・
盗賊は夜を祝い君にうたわせ
プリンセスからのながい恋文をまつ
カナリア ・・・・・・・・・
いちばん夢を見ていた人のことを教えて
いちばん恋をしていた人のことを教えて
いちばん大好きな人の名前をうちあけて
少年は春を呼びに君をつれだし
老人はもの想いへ君をつれだし
カナリア ・・・・・・・・・
鳥篭はいまも部屋の隅に飾られ
入り口の鍵の場所は誰も知らない。
カナリア ・・・・・・・・・
いちばん夢を見ていた人のことを教えて
いちばん恋をしていた人のことを教えて
いちばん大好きな人の名前をうちあけて
Word & music Yousui Inoue |
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■存在
私の全てはあなたのものだった。
髪の毛一本から、最後の一滴の愛液まで、
すべてあなたの為に存在していた。
あなたは私を自分の好きな形に変えていった。
そして好みの形になった部分を少しずつ口に含んで
自分の体に取り込んでいった。
私は自分自身が
あなたの血肉になっていくことが、とてもうれしかった。
あなたの欲望のままに
私自身を使ってもらえることがうれしかった。
その結果、自分が壊れてしまっても、
それはどこかで甘美な余韻を残していた。
もしかしたら、私は壊れてしまいたかったのかもしれない。
私を壊してくれるような、大きくて優しい存在を
ずっと待っていたのかもしれない。
あなたの存在が私の存在。
大きな支配の中で壊れていく安心感。
気づいた時には、私たちはすでに共依存とも言えるべき、
危険な地帯に入り込んでいた。
それでもよかった。
ギリギリの場所でしか得られないものもある。
絶対的な支配は、不安定な自分の存在を
こんなにも解放させてくれるのだから。 |
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■拘束
私はあなたの腕の中で、育てられた。
少女から大人へ
そしてメスへと躾され、育てられた。
決してあなたの腕の中から、外に出ないように
言い聞かされて、育った。
外界はとても怖いところであること。
あなたの庇護にあることが
唯一の私の場所。愛の証だと説き伏され
私はそれを信じて安心してそこで育った。
体を縛ることはないのに、私はあなたに繋がれていた。
あなたの腕の中から出ようとするとひどく叱られ、
そして厳しい御仕置きがあった。
御仕置きは怖かったが、そこには強い愛情があった。
私はその強い愛情に引きずられて、
その日からあなたの腕の中だけで暮すことになった。
精神的に、拘束されるのは辛かった。
でも、独占欲の強い人が好きだった。
自分の中で感覚がわからなくなってくる。
分かるのは、この男を好きだということだけ。
微妙な甘酸っぱい感覚が芽生え出していた。
いつしか拘束されることが自分の一部になっていった。
愛情の確認の指標。
拘束されないということは愛されていないこと。
体がそう解釈して不安になった。
あなたは躾られた私に安心したのか
時々私を放置して出かけるようになった。
私が怯えた目であなたを見上げると
あなたは更にうれしそうな顔をしてその場を後にした。
放置は不安。
早く帰ってきてまた私を縛り上げてほしい。
放置はきらい。
放し飼いは自分の身の置き場がわからなくなって、
不安になってさ迷ってしまう。
辛い束縛や拘束は、私に安心感を与える。
だから、息も出来ないくらい、縛り上げて欲しい。
昼も夜も見えなくなってしまうくらいに。 |
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■最後の鞭
最後にあなたからもらった痛みは、
ただ痛いだけだった。
あなたに踏まれただけで、
恥ずかしいほど、濡らした日もあったのに。
あなたに叩かれるだけで、
恍惚の鳴き声を上げた日もあったのに。
どうして今日は痛いだけなの?
こんなに強く叩かれているのに。
ただ痛いだけ・・
苦しい涙が流れるだけ・・
痛いくて、ただ怯えて小さくなって
泣き崩れていただけだった。
あの日・・あなたは私が待ち焦がれていたそれを、
簡単に私の口に放り込んだ。
いつもは私が欲しがると、おねだりさせるそれを
今日は何の言葉も無く、いとも簡単にくれた。
それなのに・・こんなに簡単に手に入ったのに
私は愛しいそれを口に含んでも
そして体の中に収めても、
やっぱり私の心の隙間は埋まらなかった。
体は正直。
心の変化を敏感に感じ取る。
もう無理だと思った。
これ以上無理だと思った。
そしてそれはあなたも同じだった。
■Photo by Mr.SAKURAI■ |
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■CANDY
口を開けてごらん。
甘くてまあるいキャンディーをお前にあげよう。
唇の上をあなたの指先がノックする。
あなたは強制しない。
ただゆったりと微笑んで私の唇を撫でるだけ。
あなたの長い指が唇の上を行ったり来たりする。
私は目を閉じて、ただその感触のみを味わった。
強制しないのに不思議な拘束感がある。
自由の中の不自由。
あなたはたった一本の指で私を快楽に導いていった。
恍惚の一瞬の隙をついて
開いた口の中に、ころんとキャンディーが放り込まれた。
口の中は唾液で濡れていた。
私はこれが欲しかったのだ。
甘くてまあるい私のキャンディー。
私は夢中でしゃぶる。
舌を使って、上顎に押しつけて、頬を膨らませて
一滴も逃さないようにしゃぶり続ける。
甘いものをくわえさせられて
自分が何を求めていたかを知った。
私はこれが欲しかったのだ。
あなたは初めから知っていた。知っていて罠をかけた。
でも、もう引き返すことはできない。
この味を知ってしまったからには
あなたにおねだりをしてこの飴をもらい続けるしかない。
キャンディー・・・キャンディー・・・
私のキャンディー。
甘くてまあるい私のキャンディー。
次はいつもらえるのだろうか。
約束のない期待は、やるせない。
今夜も甘いものがもらえずに、禁断症状で体を震わせる。 |
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■前触れ
それは、月から使者が舞い降りる前触れだった。
いつもに増して貪欲な体。
いつもに増して敏感な体。
コントロールできない感情。
自制の効かない体。
使者がやってきて私に悪戯する。
それは今宵私がメスになる前触れ。
女はメスになるこの瞬間に
コントロールできない体を持て余して
淫らな時間を過ごす。
メスになる瞬間、女は全ての快楽を集めて貯蔵する。
自分の血や肉になるものを、体に摂りこみ貯蔵する。
体の奥底から、メスの叫びが聞こえてくる。
子宮の奥から、求める声。
月からの使者は、私を操る。
快楽を貪り、終わりの無い悦びを求めて、
自堕落な渦の中に私を巻き込む。
Rescue me.
今宵、私を救って欲しい。
あなたの一言で、どんなことにでも従って
はしたなくそこを濡らし、淫らな姿で声を上げるから。
だから私をいつまでも許さずに、
思いのままいたぶって欲しい。
あと少しで、私はメスに生まれ変わる。
あなたを思って、その前触れを感じる淫らな時間。 |
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■被虐の行方
叩かれるという愛撫。
痛みという名の悦び。
張り詰めた空気。
皮膚を叩く音が響き渡る。
痛みに耐える。
あなたの愛に耐える。
このまま私を放さないで。
痛みは肌で感じる強い愛撫。
私は体ごと心ごと
あなたに愛撫されて恍惚とする。
痛みはあなたと繋がっている安心感。
従わされている安堵感。
私を支配する人がここにいいる。
歪んだ被虐の快楽に責めたてられる。
叩かれながら悦びに鳴き、
いやらしく濡れていく。
痛みで感じる淫らな体。
とろりと濡れた雫は溢れだし、
そのまま滴り落ちてくる。
不意にあなたは赤く痛みの残るそこに、
優しい手入れを施した。
あなたに愛された証拠の足跡をなぞって
さらにそこに愛情を吹き込む。
この幸せに安堵する瞬間は
大事なインターバル。
どんなに苛められても
大事な人に撫でられた経験は信頼となり
次の責めを耐え抜くことが出来る
マテリアルになる。
安堵の時間はすぐに痛みと変わる。
さっきよりも強く、厳しい痛み。
優しくされた分だけ淫らな声で鳴く私。
今夜もまだまだ許してもらえそうにない。
あなたの体温の変化に翻弄されて
震えが止まらない。
優しさと痛みの繰り返しの中で、
私は永遠にあなたに仕える玩具になるの。
あなたの愛撫に振りまわされ、
快楽の渦の中に狂いながら
埋もれていく玩具になるわ。 |
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■緊縛の時
「動くな。」
あなたの低い声が、
静かにゆっくりと私に命令する。
あなたの言葉に縛られて、体が反応する。
私はそれ以上動けなくなった。
その空間には抵抗する隙間などなかった。
私の意志は、体から吸い取られ、
あなたの言葉でしか
動くことの出来ない人形になった。
私の意志はあなたの言葉。
あなたに言われるままどんな姿にだってなれる。
あなたの数少ない言葉の行間に感じ、
体全体が敏感なる。
私はあなたの瞳を見つめながら、
これから起こるであろう、
快楽の恐怖に震えていた。
私はいつだってあなたの為すがままだ。
言われるままに服を脱ぎ
求められるままの服従の姿に身を置いた。
たった一言なのに・・
私の全てを縛る言葉がある。
言葉は鎖。
私の体と心を縛る見えない鎖。
あなたの鎖に繋がれて
私は、あなたの可愛い人形になる |
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■美しい人
美しい人だった。
物静かだが、強い光を持った美しい人だった。
彼女の瞳はサディスティックな光に溢れ
人を捕らえて離さない力があった。
見詰められる。
あなたにそっと。静かにじっと。
そこに溢れる空気は冷たいのに
私の体の奥はじわりと熱く高揚していく。
その瞳には逆らえない力があった。
人を跪かせる不思議な瞳。
長身でスレンダーな肢体。
長く美しい四肢。
私はその美しい肢体に見とれていた。
見とれながら自分の感情の中に
新しい感情が生まれてくるのを自覚していた。
ふと見ると、彼女がこちらを覗きこんでいた。
うっすらと微笑を浮かべて
手には縄と鞭を持って。
彼女は私の中のマゾヒスティックな匂いを嗅ぎ出し
あなた専用の玩具にすべきかどうか選定し始めた
「おまえは私にどう扱って欲しいの?
人形?ペット?奴隷?それともお姫様?
・・・おまえの望むようにしてあげましょう・・・」
私は彼女の口からこぼれる
甘美な言葉に酔っていた。
そして私は彼女の部屋で飼われることになった。
時に意志を持たない人形として
彼女の思うままに遊ばれ、
時に奴隷として自分のパーツを使って彼女に奉仕し
時にペットとして全裸になって彼女の傍に繋がれた。
それでもいつも彼女からの責めは甘美で優雅で
その道具で、その指で、舌で、
時には別の女性を使って
私は何度も快楽に鳴かされた。
「いい声でお鳴き・・・」
私が快楽のしずくを垂らして
鳴いている姿を確認すると
彼女はうれしそうに煙草をふかした。
余裕に笑う彼女は美しかった。
彼女が吐き出すその煙すら美しかった。
そして私は終わらない快楽に
何度も鳴き叫んでいた。 |
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■リップスティック
情事の後の甘く気だるい時間。
さっきまで激しく愛し合っていた
淫靡な残り香が、微かにそこにある。
このまま永遠に
眠ってしまいたいほどの穏かな時間。
あなたに選んでもらった
オレンジ色のリップスティック。
透明感のあるうすい色。
私はまるでおねだりするように唇を差し出した。
あなたが私の唇を擦り、色をつけていく。
まるで秘部を触られているかのように
私の唇は濡れていく。
口紅が私の唇を行ったり来たり・・
ゆっくりゆっくりとそこをなぞる。
私はたまらず色づいた吐息を漏らす。
そんな私の姿にあなたも気づき
さらにじらすようにゆっくりとなぞる。
「さあ・・できたぞ。きれいだ」
あなたのよってメイクを剥がされ
あなたによってまた
美しく仕上げてもらった幸せな私。
情事の後の淫靡なリップスティック。 |
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■ ONE
一人ぼっちの夜。
明日を思って不安で眠れなくなる。
こんな夜は何度も愛してると言って。
嘘でもいいから優しくして。
嘘だとわからないように優しく抱いて。
■photo by NEVER BRAND Mr.SAKURAI |
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■ミダラな絆
深く愛を知る前に、
強い淫らな絆で結ばれてしまった、
幸せで愚かな二人。
気持ちを確かめる間もなく、
あなたは私を欲しがった。
あなたはその熱い体を静める人形を欲していた。
私はあなたの愛を知ることも出来ずに
訳もわからず、あなたの人形となった。
あなたによって体が開かれ、
苦痛が快楽に変わっていくことを教えられた。
私はあなたが嫌いだった。
わがままで、無茶ばかりするあなたが嫌いだった。
そして、そんなあなたから離れられない自分が
大嫌いだった。
私たちの唯一のこの絆のせいで、
私の体はあなたの体に縛り付けられ、
あなたから逃れることが出来なくなった。
逃れようとその手を払った時もあった。
しかし、それ以上の力で私を封じ込むあなたに
更に私は感じて動けなくなっていた。
逃れられない渦の中にいた。
私の小さなそこは、
乱暴にそして優しくあなたの形に変えられていった。
何百回とあなたに抱かれた私は、
あなたを受け入れるために存在しているかのような
あなたにぴったりとした形になった。
淫らな絆。
離れられない恨めしい絆。
あなたなんてだいきらい。
だいきらい・・・。 |
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